Topics&Columns(2000年6月4日)
コルクの代替--スクリュー栓の使用
以前「コルクの話」として、コルク使用の問題点や代替品の開発状況などについて書いたことがありました。その中では熟成が遅くなる可能性は残されているが、品質的にみれば、コルクよりむしろプラスチック製の人工コルクやスクリュー栓を使用したほうが安定する、コルク使用は伝統的な意味とイメージ的な要素によるものだ、というお話をしました。
最近のワイン・トゥデイ、ワイン・スペクテータにナパの高級ワインにそのスクリュー栓を使用したものがついに登場したというニュースがのっています。ナパのオークヴィル(モンダヴィのあるところ)にあるプラムジャック・ワイナリーが9月にリリースする1997年のリザーブ・カベルネ・ソーヴィニョンの半分(生産量300ケースのうちの150ケース)は、コルク栓ではなく、スクリュー栓で出します。プラスチックコルクではなくて、スクリューです!
プラムジャックのパートナーの一人であるコードン・ゲッティ(裕福な慈善活動家らしい)が、ほかのパートナーたちを思い切らせたものです。プラムジャックでは「コルクとプラスチックではどちらがより良いということは決着がついていないが、多くのワイン専門家たちが汚染させれたコルクによって迷惑したという話をきいて踏み切った。いい加減誰かがやらなければという話も聞いていたし」とのことです。
見た目は、紐がついている以外は、普通のボトルと変わりないようです。そして充填量は、通常のボトルと同じです。しかし、コルク栓ボトル125ドルに対してスクリュー栓135ドルという値段です。なんとコルクよりも高いのです。この理由は、通常と異なるボトリング仕様のためにお金がかかったためということのようです。しかし、生産者側からみたリスクプレミアム(つまり売れるかどうかわからない)と、目新しいということで買ってくれる購買層を念頭においたプライシングということでもあると思いますが。もしかしたら品質安定ということで消費者がプレミアムを払ってくれると踏んでいるのかもしれません。いずれにせよ・・・プラスチック・コルクは、すでにいくつかのワイナリーで使用されていますが、高級ワインでのスクリュー栓使用は初めてです。消費者にどのように受け入れられるかが楽しみですね。
実物を見てみたいですが、充填率が同じということは、隙間が多いことが予想されますので、より多くの空気が入っているのでしょうか?そうすると熟成の仕方が違うので、まったく別物のワインです。単にキャップの違いだけではないのではないでしょうか?私でしたら、125ドルでスクリュー栓のやつを買います(ないんだってば!)(H)
ポルトガルのワイン
ポルトガルと言えば、ポートワインですが、最近ではテーブルワインの品質もかなり向上しています。フランスなどのテーブルワインに比べてずっと安いということで、バリューにうるさいアメリカ人に評判が良いようです。今年は、全生産量145百万ガロンのうち、50百万ガロンが輸出にまわされることになりそうで、これは昨年の60%増という数字です。
ポルトガルワインの品質がどのように向上しているかということについて、トム・スティーヴンソンの言葉から引用してみましょう。「もしこの本を2年前に改訂するという事になっていたらば、今のように興奮してポルトガルワインのことについて書こうとは思っていなかったでしょう…」 これはThe New Sotherby's Wine Encyclopidea を、彼が1997年に改定した時の言葉で、ポルトガルのページの冒頭です。ポルトガルワインの品質向上についてうまく表現された言葉です。ちょっと続けて紹介してみます。「かつて、ダンといえばドライで、果実味がなく、退屈で、重たくて酸化した白ワインというのが典型的でした。しかし、1995年になってみると、随分変わっていました。おいしい果実味を持っている、気軽な赤とか、フレッシュで歯切れの良い白が目白押しなのです・・・世界でもっとも低価格で、パッとしないワインが1994年辺りを境にして、2倍のフルーツを持ったワインに変身したのです。瞬く間に世界の注目を集めることになりました」
高級なワインも当然のことながら同じ流れにありますが、ワイン生産者が品質に目覚めても、なかなか高級ワインを造れない状況があったのは事実です。それを阻んでいたのは、実は最近までネゴシアンはワインしか買えなかったことがあります。ブドウを購入して自分で醸造するということができなかったのです。バルクワインの業界が発達していて、ほとんどのブドウ生産者は、それらバルク業者に卸し、バルク業者は発酵などは自然に任せきりで、コントロールなどはしなかったのです。最近の品質向上の流れにあって、栽培と醸造がより密接にワークすることができるようになってきています。
皆さん興味が湧いてきましたでしょう?飲んでみてください。日本でのポルトガルワインの値段はいまやピンきりですが、それなりにうまいです。上記で紹介したダンといえば、生産されるワインの種類は随分と異なりますが、ポート、マデイラに続く産地と考えられています。生産地域の話などはまた別の機会にご紹介します。(H)
ワイン・ビジネスの裏舞台を支える人々
われわれ消費者というのは、常に製品だけを相手にしているわけですが、ちょっと裏側の重たい話をご紹介します。込み入っていますので、なかなか理解しづらいと思いますが…
ガロで起こっている労働争議の話題です。労働争議というのは、労働側、経営者側常にどっちもどっちで決着しづらく白黒がつけにくいものです。それは事実を離れていろいろな思惑が入ってくるからです。そして、結局は第3者が仲裁にはいるか、あるいはそのときの交渉力の差でもって決着するようですが、この場面ではどうでしょう。以下要約です。
ガロには、直接、ワイナリーが雇用している従業員(=組合員)もいますが、ブドウ畑の作業員というのは、ガロが契約している5つの業者に任かされており、その業者の従業員という位置付けです。畑の作業員たちが、労働条件の悪さを理由に、5つのうちの業者のひとつであるリオスを相手に争議を起こしています。残業手当を支給しないし、畑の中でトイレも提供しないし、水さえも供給しない。そして、セントラル・バレーからソノマにきた労働者は、モーテルの一部屋に8人が押し込められていて、外出も面会もできず刑務所状態だというものです。そしてさらに23名の労働者がユナイテッド・ファーム・ワーカー(UFW)という組合組織に入ろうとして首になったともしています。リオスは、約600ヘクタールのソノマのブドウ畑を管理するために、この3月にガロが契約しました。
UFWによれば、この作業員たちをバックアップする形で、これ以外の不正雇用行為もすべて集めて、農業労働者委員会に正式に持ち込むとしています。ガロ側は「うちとは別組織なので、直接うちのコントロール下にはありません」と述べています。
UFWは、実はこれまでもガロとは交渉をもちつづけてきた背景があります。「業者の労働基準法上の違法行為に対しては、業者の雇用者も共同責任をとる」という法案を成立させるために、ガロに対して6年越しの交渉を行っていますが、この法案に対しての投票は6月2日に行われました(結果はわかりません)。一見よくわかりませんが、どういうことかといいますと、実は6年前に(業者でなく)ガロの本体の従業員はUFWの組合員となったわけです。それ以来、ガロの従業員でない労働者の労働環境を向上させようと、上記をはじめとする法案に対して協力させようと、ガロと交渉を続けてきたのです。
マリア・レイスはリオスに雇用されていますが、ソノマで9年間働きつづけてきました。2名いる女性の一人です。畑には女性用のトイレはありません。トイレは2つしかなく、70名の男性労働者も同じトイレを使用します。「私がこんな話をすると首になるかもしれませんが、ガロのような会社には、もっと労働者に対して責任を持って接してもらいたいのです」と述べています。
リオス側の代表は、「ロダイ(セントラル・コースト)からきた人々には必ず一部屋6人以下で使うようにしているし、休日にはどこへ出ようがかまわないし、今までUFWに加入しようとした人々を首にしたこともない。ただ仕事がなくなったからやめてもらっただけ」と述べています。
ワイナリーの従業員たちは、メキシコ人が多く、季節労働者が大半です。労使関係はなかなか難しいものがあるということでしょう。カルトワインを筆頭にして脚光を浴びてきているワイン、ワイン生産者、ワイナリーオーナーなどがありますが、そういったブームがある一方、ブームとは無関係のところで、まったく光はあたらないけれどもそのブームをささえる人々、ブームとは関係なく苦労を続ける人々がいるということは、消費者の一人として忘れるべきではないと思っています。(H)
1998年のブルゴーニュ白はどうか?
最新号のワインスペクテータに「非常に良い、しかし高い」という見出しで出ていました。理由は1998年という年は、1990年代でもっともひどいと言われた年で、もともとまったく期待のできない年でした。5月ごろつぼみが大きくなる頃に吹雪に見舞われ、そしてそのあとにシベリア寒気団がやってきて、そして雹にさえ見舞われたのです。夏にはカビ病にやられ、カビをとるために施した処置も良くなかったといいいます。それでも8月末には残った果実は十分な糖度にあがりました。しかし、9月前半の大雨で糖度は下がっ手しまったのです。ただ収穫時期にわずかに10日ほど陽がさしたために、いくつかのワインメーカーはいいブドウが収穫できたというものなのです。もちろん厳しい選果を行わなければなりませんでした。全体を比較すると、1995年、1996年に比べて質的には落ちるということになり、従って、造り手を選ばなければならないのです。しかしどれも早飲みのワインのようです。値段的には、1997よりあがるものあれば下がるものもあるということで、結構荒れ気味のようです。さて、今回300のワインのテイスティングを行ったというパーヘンリク・マンソンのお勧めの造り手は次の通りです。中でもマルク・コランは秀逸としています。
Marc Colin, Fernand & Laurent Pillot, Jean-Marc Boillot, Colin-Deleger, Vincent Girardin, Joseph Drouhin, Chartron & Trebuchat
私としては、息子のヴィンテージでもあるので「買っておいてやろう」と思ったのですが、、、残念です。(H)
それならボルドーはどうか?
といっても、これは1999のプリムールの値段が出始めたという話です。これもスペクテータからです。
4月のジェームズ・サクリングのレポートの中には、1998より15%程度値段が安いと出ていましたが、そのときまでに発表されたワインの中でよく知られたものはいくらぐらいだろう、とグリュオー・ラローズの値段を調べてみましたら、136フランという紹介がありました。同じ記事にソシアンドマレが100フランとなっています。多分この値段は、ボルドーの業者に卸されるオープン価格と思われますので、消費者の手元に案内される値段はこの価格の2〜3倍になるようです。
5月25日のJSの記事の中には、ムートンとラトゥールが459フラン、1998年の7%アップでのオープン価格となっています。他のシャトーのプリムールが値段を下げる中、5大シャトーはまったく異なる根付けがなされます。ラトゥールの場合、「40%も生産量が少なくて1998年より良かった」ということでこのような値段になったようです。(H)