Topics&Columns(2000年6月18日)
ジャンミシェル・カーズの引退
シャトー・ピション・ロングヴィルの社長であるジャン・ミッシェル・カーズが今年一杯で引退するそうです。ピション・ロングヴィルは、保険グループ大手のAXAの所有なので、その定年にあわせたもので、その後は自分のシャトーであるランシュ・バージュ、レ・ゾルム・ド・ペズ、ヴィラ・ベレールの経営に専念するとのことです。ちなみにピション・ロングヴィルの新任社長は、クリスチャン・シーリーで39歳、ちなみに彼の父親は「グレート・ボルドー・ワイン」という本を出しているジェームズ・シーリーです。
もう一件、引退のニュースがありました。1973年にナパのドメイン・シャンドンが出来たときからそこのワインメーカーのチーフだったドーネン・ダイアーも、一部のコンサルタント業務を残してやめるそうです。彼女と夫(やはりワインメーカーのBill Dyer)は今後、自分たちのカベルネ・ソーヴィニョンに専念するとのこと。後任はウェイン・ドナルドソン。ドメイン・シャンドン・オーストラリアのチーフ・ワインメーカーだった人物です。スティルワインのビジネスを強化するそうです。マルチ・ナショナルな会社です。
モンダヴィ帝国への抵抗
ラングドック・ルーションといえば、日常的でカジュアルに飲めるワインの産地として知られていますが、ここでも歩留まり(面積あたりのブドウの収穫量)を低く抑え、いいワインを造ろうとするワイナリーもあります。その中でも有名なのは、ご存知ドーマス・ガサックで、ヴァン・ド・ペイでありながら、日本でも約5000円程度の値段で売られる高級ワインを造っています。そこがモンダヴィの進出を「植民地化」だとして抵抗しているという記事がワイン・トゥデイに載っていました。
オーナーのギベール氏は、当初、進出することに興味を示していたモンダヴィ側に対して、自分の畑を売ることも検討していましたが、結局それを断り、モンダヴィのやりかたにことごとく反発しています。モンダヴィを代表しているピアソン氏によれば、3、4ヶ月一緒にワークして最後にオファーを提示したが、その結果がギベール氏怒らせる原因になったとしています。
モンダヴィ側の計画は、330万ドルかけて、セランヌ丘の南西側のふもとの125エーカーの畑を開発するというものと、ガサックのすぐ隣に、さらにワイナリーに500万ドルをつぎ込むというものです。畑は、所有している村からリースされます。約10年をかけてシラーを中心にしたプレミアムワインを生産するというプロジェクトです。ギベール氏に断られた後に、モンダヴィの責任者であるピアソン氏は近隣の土地を探し、アニアン村が所有する畑を探し当てました。村はきわめてオープンだったといいます。モンダヴィ側は、後に500に上るブドウ栽培からもブドウを購入するという約束をしています。これに対して、ギベール氏は、グリーン党、共産党と結託してモンダヴィと村を管轄するエロール市長に対してキャンペーンをはって、このプロジェクトを阻止しようとしています。「モンダヴィはワインをヨーグルトのように売る輩、市長は密室で約束した」といっているようです。さらには「モンダヴィは侵略者だ。そして市はドーマス・ガサックのお陰でようやく有名になった中小の生産者が集まるこの地を多国籍化してつもりか?」と述べて信奉者を募り、ついに予定された畑につながる道路を分断してしまったようです。しかし、フランス地裁は、ギベール氏に対して、3万フランの罰金を命じました。もともと市側がモンダヴィプロジェクトに対して資金援助をするということでギベール氏が訴えたものでした。
一方、モンダヴィ側ば、3年間かけてラングドック・ルーションの中で可能性のある場所を調査しつづけてきました。そしてドーマス・ガサックの隣の隣にその場所を見つけたというわけです。グローバルな高級ワイン生産戦略の一環にすぎないということのようで、ここでは最高のシラー種のワインの生産を目指しています。だいたい一本60ドル程度のワインとなるようです。ただ、AOCを変えることはできそうにないので、ワインはヴァン・ド・ペイになるようで、スーパータスカンのような存在を目指すものです。
ちなみにドーマス・ガサックは世界中で、プレミアム価格で売られています。ギベール氏が30年前にこの地にたどり着いたときには、ブドウは植えられていない土地で、年寄りの持ち主家族は、銀行に土地を売り渡すところでした。そうしたら土地は分断されて、ちりじりにされるのです。ギベール氏はその状況を見かねて2倍のお金を出して、持ち主の家族を救い、ブドウ畑に転換させたのです。実は、ギベール氏はここで事業を始めるまでは、ブドウを栽培したことはありませんでした。ただ家族経営で革製品を作る会社の社長だったのです。そして、先見の明のあった彼は、エミールペイノー教授をコンサルタントとして向かえたのです。現在の畑はカベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワール、シラーその他のブドウで埋め尽くされています。ラベルにはヴァン・ド・ペイ・デロールと書かれているだけですが、評判のよいワインです。
あなたはどちらですか?個人的には私はギベール氏を応援します。どういう人間が造っているワインというのがわかるワインが好きです。金が造るワインは興味がありません。(アメリカのワインが好きなくせ)(H)私は、モンダヴィ派です。古い慣習や考え方などにとらわれて、ちょっと感傷的すぎるのではないかと思います。個人的に反対することはいいとしても、それを土地全体の排斥運動に結びつけるのはあまりにやりすぎ。(N)
ベルナール・アルノー
といえば、ワイン産業界、そしてフランスの産業界では泣く子も黙るLVMHの会長です。ワインスペクテータ−の表紙に肖像が出ていましたということを皆さんにお知らせします。この人がこれほどプライヴェートを話しているのは珍しいという内容となっています。内容は今回は載せません。LVMHといえばですね、利益の40%は日本からあがっているのです。いまやLVMHはワインだけでもクリュッグ、ブシャール、シュヴァル・ブラン、シャトー・ディケムのそうそうたるブランドを一手にもっているのですよ。つまり日本人は彼の投資ゲームには欠かせない存在なのです。(H)
いまガラス羽シャープシューターはどこまできたか
ガラス羽シャープシューターというのはこれまでも数回お伝えしてきておりますが、ピアース病の運び屋です。(ピアース病はフィロキセラより短い期間の内にブドウの木が死滅するという病気です。詳細はバリックヴィルウェブの過去のトピック2000年3月をご参照ください)さてカリフォルニア南部でアウトブレークしたこのガラス羽シャープシューターは、北上を続け、先月はフレズノの南50kmまで迫っているという話でしたが、6月14日のサン・フランシスコ・ゲート・ニュースによりますと、ぼちぼちサン・フランシスコの辺りにも登場し始めています。ナパは目と鼻の先です。
どうやって発見したかが書いてあります。最近はガラス羽シャープシューター捕獲用に大きな粘着質のボードを立てているそうですが、そこにガラス羽シャープシューターの成虫一匹を見つけたというものです。ただの2センチ弱の虫「一匹」の発見で新聞沙汰となるということがどういうことが皆さんおわかりいただけますでしょうか。専門家は「この虫を撲滅することは到底出来ないので、木や作物をどこまでバクテリアに対して強く出来るかということをマネジするしかない」と言っています。現実には殺虫剤を撒く、スクリーンをつけてわなを仕掛ける、そして!シャープシューターの卵の中に自分たちの卵を植え付けるという性質をもつ小さなスズメバチを飼う?というやり方を利用しています。
ピアーズ病にやられた場合、全部畑を植え替えますので、おそらく3年間は作物は使えません。まともなワインが生産できるような樹齢になるまでに15年かかりますので、品質的には現在より大きく下がることになるでしょう。ワインも大変ですが、ワイン産業に従事している人々は大変なことになります。最近はワインの競争は生産、消費、いずれから見ても世界的な競争となっていますので、競争に遅れをとるということになるでしょう。「それでも大丈夫な畑はあるだろう」と思いますか?フィロキセラ以上に広がりがはやく、フィロキセラと異なって飛び道具を持っている相手ですので、例外なくやられてしまうでしょう。その後の処置としても畑を焼いて、フィロキセラに強い台木を使ってもう一度植え替えれば大丈夫ということにもならないのです。またすぐに舞い戻ってくるかもしれないという恐ろしさがあります。だから専門家は病気に対して耐性を持つブドウを「創らなければ」ならないと言っているのです。どうやって?時間がないですのでたぶん遺伝子操作が有力ではないでしょうか?どなたか教えてください。(H)
台風、火事
ローヌでは6月10日の週末に嵐が吹き荒れました。北のほうが被害が大きくコート・ロティ、コンドリュ、ボージョレイは相当やられたようです。この季節では小さな果実ですので、雹が砕いてもまだ多くの果実は残されているようですが、場所によって5%から40%までの被害の差があるとの事です。また土壌が流されてしまったことも問題が大きいかもしれないとのことです。ご存知かも知れませんが、コート・ロティ、コンドリューの畑の斜面は相当な急斜面です。ボルドーでも天候不良のようで、湿度も高く、毎日ボルドー液を散布しなければならない様です。
こちらはカリフォルニアでの大火事の話です。火曜日に発火したようですが、ナパの東の野生林で2300ha(16日現在)を焼く大火事が発生しています。1087人もの消防隊員が出動しているようですが、6月16日の金曜日にも火は納まっていません。今のところブドウ畑への被害は及んではいないようです。週明けには火がおさまっていることを望みましょう(週はあけましたが、まだおさまっていないようです)。
しかし本当にブドウというのは農産物ですよね、自然から恵みを受ける。その代わりに自然の災害には弱い。(H)