Topics&Columns(2000年6月25日)

ワイン産業とその社会的位置付け

大げさなタイトルですが、7月6日にナパで開かれる予定の"Wine Vison"のテーマのようです。メイン・スピーチは、ボブ・トリンチェロ、ご存知のようにサターホームの創始者です。その他に、クリントン大統領のかつてのチーフスタッフのレオン・パネッタ、上院議員のマイク・トンプソン、スミス&ホーケンの創始者のポール・ホーケン、ワイン・インスティテュート会長のジョン・デルーカ、かつてのヒューレト・パッカードCEOで現在ケンダール・ジャクソンCEOのルイス・プラットという面々がスピーチをするということになっています。

トリンチェロ氏は、「アメリカワイン−ネクスト・ジェネレーション」ということで、現在国内ではワインがどうみなされているかに就いての分析し、ワイン産業に従事する人々が社会の中でどう自分達を融合させることが出来るかについて話します。パネッタ氏は、ワイン産業の社会的な責任と政治との関連について話します。

トリンチェロ氏は、かの「ホワイト・ジンファンデル」を「発明」した人物です。「コーラを終えた世代が飲むワインとは?」と考えて、ホワイトジンファンデルを売り出し、一躍大富豪になりました。これは現在翻訳中のジェームズ・コナウェイの”NAPA”に詳しいですが、まさに社会とワインを結びつけたということを語らせる状況では余人をもって代えがたい人物です。ネクスト・ジェネレーションというタイトルもぴたっときます。パネッタ氏はカリフォルニア出身で現在もカーメルに住んでいるようですが、1993年にクリントン政権に入る前は、いずれも政府の委員会ですが、農業委員会、予算委員会、人権と政策のサブ委員会に入っていた関係上、政府の立場からワイン産業と公共政策との関連について話せる人物です。そしてホーケン氏は、1979年にメールオーダーサービス会社のスミス&ホーケンを設立しましたが1991年には退任し、「エコロジーとコマース」という本を出版するなど、現在自然とビジネスとの関連に焦点を置いた教育機関を設立するといった活動をしています。

400もの関係者が参加するそうですが、非常にユニークな会議になりそうですね。「社会に溶け込む必要性」といった類の議題が出てきている背景には、実はワイン産業とシエラクラブなどの自然主義者に後押しされた周辺住民との対立が出てきているためです。ブドウ畑の拡大は、特定の動植物を絶滅の危機に追い込むというのが、シエラクラブの主張ですが、カリフォルニアに住む人々の中でワイン産業だけが突出して成長してきていることに対するやっかみがあることを逆手に取っているともいえます。そこでワイン産業に従事する人々はこれまで以上に積極的に一般市民と対話をする努力をしなければならないという事があるようです。どなたか参加されたらお話を聞かせてください。(H)

 

シーバス・リーガルの行方

ここしばらくの間に急展開を見せたのが、シーグラムの(部分的)売却の動きでした。ビジネス情報みたいな内容ですが、ちょっとお伝えします。

シーグラムと言えば、ワインの人間が知ることといえば、ウィスキーの「シーバス・リーガル」「グレンリヴェット」とかウォッカの「アブソルート」ですが、実はリキュール部門と並列して大きな部門だったのが、ユニバーサル・スタジオとレコード会社のポリグラムなのです。ユニバーサルはかの松下から1995年に買収しました。ポリグラムは1998年にフィリップスから買収しました。そして今度合併がきまったヴィヴェンティというフランスの会社は、そもそも水処理とか建設業をやっている会社でしたが、いつのまにかサテライトTVとか、AOLフランスの大株主となっていて、すでにこちらが本業的になっています。

「インターネットはもはや、より早いとか、よりキレイとか言っているようなものではなくて、はるかに実用的な存在となる」とヴィヴェンティは言っているようですが、今回の合併はインターネットを中心としたエンターテインメント・サービスとか情報提供サービスを行う会社を目指したものです。ヴィヴェンティ側が3兆円でシーグラムの株を譲り受けることでこの合併は成立しました。シーグラムCEOのブロンフマン氏が新会社のトップとなります。そして、合併後にリカー部門は切り離すと言っています。

このリカー部門はどこに行くのか?ということですが、まだ決まっていません。ペルノ・リカー、レミー、イギリスのアライド・ドメックなどが候補者ですが、売却価格は7000億円程度になろうと言われ、アライド・ドメックが最右翼だろうといくつかのビジネスニュースは伝えています。しかし「デュワー」ウイスキー、「ボンベイ」ジンなどのブランドをもっているバカルディは部分的なブランドに興味を示しています。前回お伝えしたLVMHはコニャックを除くリカービジネスからは撤退中ですので、候補の中には今のところ出てきまていません。

多分トップの部分の資本関係では、一般消費者に及ぶ影響はあまりないかもしれませんが、日本の代理店サン、商社サンなどは大変ですね。どこがそのブランドを扱うかということで多分流通は変わるのだと思います。多分シーバスなどはドル箱でしょうから、このブランドがどこに行くかというのは結構興味深いところがあります。あまり無責任にはいえませんが。(H)

レーティングは悪だ!

6月15日−22日のボストン・フェニックスの「Uncorked」の記事を全訳でご紹介します。コメンテーターはワイン評論家のT・アイバーソン氏です。

ワイン業界にはこんな話が広がりつつあるそうです、、、ある男がワインショップに入ってきてテイスティングをする。そして顔をしかめ、ワインを吐き出し、そして叫ぶ「これはひどいワインだ。これなに?」
そして店の人間が答える「それは最近のサイン・スペクテータ−誌で95点だったものですが」
その男がいう。「一ケースもらおうか」

やや大げさな話とは思われるものの、ショップの人々は多くの人が、これと似たような感覚でワインを買うということは周知しています。点数というのは便利ですが、ワイン産業にとってマイナスの影響があるだろうと考える人が増えています。ワインにロマンチックなものを求めるというより点数を求めがちになっているのです。

点数が好きだという理由はわからなくはありません。多くの人々はワインを言葉で表現する事も好きですが、点数はそれを一言で言い表せます。もうひとつ重要なことは、ワインの値段が上がっているために、第三者の確認なしでは簡単にはお金を出せないというのも事実です。だからこそ皆さんはワイン評論を見るはずです。

どこでも、誰でもわかるということで点数を無視できなくなっている状況もあります。広告に載っているし、ワインの棚には点数を記したカードがつけてあるし、レストランでさえもポイントを載せている始末です。そうでなくてもポイントを完全に無視しているレストランの数など知れたものです。同じ生産者の違うワイン評価や、異なるヴィンテージの評価を紹介したりして混乱させるものもありますが、これは好ましくはありません。

「レーティングというのは込み入ったワインの世界からいいものを選び出すためのツールではないか?」もちろんそうですし、レーティングを使うということが悪いことはありません。しかしそれは自分の好みがわかってのことでしょう。点数というのは、ワインが実際にどんなものなのかということは一切触れません。95点のワインはどういうものなのか、それだけではわからないはずです。豊満で樽香たっぷりのナパのシャルドネか、きりっとした酸味の利いたシャルドネかといったことはわかりません。もしあなたがどちらか一方を、もう一方より好きだったらどうでしょう。

点数主義を危険だと思うところは消費者の所ではないかもしれません、むしろその川上です。といますのは、レーティングが載った雑誌が手元に届いた瞬間に、非常に多くの消費者が95点以上を獲得したワインを買おうとして電話を取るわけです。その結果として高いポイントをつけたワインは一瞬の内に市場から姿を消し、わずかに売れ残ったワインは天文学的な値段に跳ね上がるというわけです。ショップの人々の最近のクレームは、スペクテーターだのアドボケートだので95点をつけたワインは手に入らないし、85点以下のワインは売り切れない、、、

この問題はさらに生産者のほうにも広がっていきます。トップの評論家の味わいの好みが徹底的に研究されて、どこの国にいっても彼らの味わいの好みに合わせるように造られるようになっていっています。多くのヨーロッパの生産者は「キュベ・パーカー」なるワインを誇らしげに「うちにもあるぜ」といって見せます。そのワインはパーカーが好きな、熟成しすぎのブドウで造られた、アルコール度数が高く、オーク300%のワインなわけです。つまるところ世界中のワインが同じ味になるという悲劇につながります。

メディアも消費者の目も入手不可能な、恐ろしく値段の高いワインへの向いてきつつあります。点数の利用の仕方については、誰かが推奨しているワインであって、そしてその推奨の理由を同じページに文章で書いているのであれば、横に書いてある点数をどのように受け取るかということは消費者次第でよいと思います。しかしワイン全体の品質とイメージに対して影響を与えてしまったという反省にたって、私も含めて、何名かの評論家はレーティングをしないことにしています。

「いったい何を言いたいんだ?」と思われているかもしれませんが、私は消費者の方々に、自分自身のワインの評価の仕方を見つけていただきたいと思ったのです。われわれのような評論家は、そのお手伝いは出来ると思います。しかしわれわれの舌は皆さんの舌とは同じではありません。評価された数字も同じく、皆さんの舌で評価したものではありません。

ということで、今回の推奨ワインをリストします。

セッラ・モスカ 1998 アルゲーロ 「レ・アレナリエ」 (12ドル) 夏のカジュアルワインです。純粋なソーヴィニョン・ブランで、このサルジニアワインには、青草のようでレモンのような心地よいジューシーさがあります。複雑ではありませんがおいしいワインです。よく冷やして飲むと、グリルした貝類とあいますよ。
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タブラス・クリーク 1997 「タブラス・ルージュ」 (32ドル) 本当にスパイシーです。しかし米国産のローヌスタイルのワインとしてはベストに数えられるでしょう。焼けたベリー、そしてハーブ、そして印象的な土っぽさがあります。スムーズで、驚くほどのバランスがいいのです。いまでもすばらしいワインですが、もう2、3年たつとより良くなるとおもわれます。バーベキューと合うでしょう。ボストン・フェニックスにはもう一人ワイン評論家がいます、デヴィッド・マーグリンですが、彼も推薦していました。そう、買おうか買うまいか考える必要はないと思いますよ。

さて、私はこれまでも似たようなことを言ってきていますので「そのとおりだ」と思いますが、皆さんはこのコラムはどう読まれるでしょうか?参考までにセッラ・モスカは、サルジニアの大手の造り手、タブラス・クリークは、カリフォルニア州、パソ・ロブレのワイナリーで、南ローヌのシャトー・ボーカステルの資本がはいっています。(H)

 

ナパの火事

カリフォルニア北部の高温と、ナパの大火事によって大きな被害が出た模様です。伝えられた大きなものは次のとおりです。

  • コーネル・シャンパーニュ・セラー: $36Milの被害
  • フランク・ロンバウワー/ラークミード・セラー: $40Mil.90000ケースの被害(うち2万ケースは様々な生産者の高級ワインの預かり分)
  • ハンナ・ワイナリー: $7Milの被害
  • シゲイシオ・ワイナリー: $2Milの被害
  • カーメネ・ワイナリー: $5Mil以上の被害
  • ソノマ−カトラー: $1Milの被害

誰を責めるというわけに行かないだけに、被害にあったワイナリー、セラーは気の毒ですが、ある評論家は、高級カベルネ・ソーヴィニョンの値段がさらに上がるとしています。(H)