Topics&Columns(2000年8月13日)

 

本日も長々となってしまいました。いつもいつもお付き合いいただきまして有難うございます。

オレゴンのピノ・ノワールはカリフォルニアを抜いたか?

オレゴンといえばピノ・ノワール、ピノ・ノワールといえばオレゴンと言われるほどですが、・・・え?違う?

オレゴンには150のワイナリーがあります。オレゴンというのは、カリフォルニア州の上にある州で、ポートランドが州都です。ポートランドは、州の北にあってワシントン州と州境を接しています。そこから南に約150kmに渡って延びるウィラメット・バレーがピノ・ノワールの産地です。最近は様々なショップでオレゴン産のワインを見かけるようになりました。

最も良く知られたワイナリーは、ジョセフ・ドルーアンが開いたドメイン・ドルーアンで間違いないしょう。次はといえば、多分人によって様々な答えが返ってくると思いますが、私の場合は、ボー・フレールです。ロバート・パーカーが株を持っていますし、ここの畑に入るためには、靴を履き替えなければならないというほど畑の中に虫が入り込むのを嫌っているワイナリーなのです。

さて、ドルーアンがどうしてここに来たかをちょっとご紹介しましょう。ドルーアンといえば、かつては今以上に偉大なるネゴシアンだったわけですが、自分でワインコンテストをやっていた事があります。そこで1975年にもコンテストをやったわけです。その中にオレゴンの、デヴィッド・レットが所有するエイリー・ワイナリーの1970年ピノ・ノワールが入っていました。1位には、ドルーアンのシャンボール・ミュジニ1959で、二位がそのエイリーだったのです。ドルーアンの1961年シャンベルタン・クロ・ド・ベーズは、なんとその後塵を拝してしまったのでした。つまりそこに参加した他のブルゴーニュは全て、オレゴンに負けたのです。これを機に、ドルーアンはオレゴンへの進出を決めたのです。

ドルーアンは木々が生長し、果実が実るようになるのを待ち、その果実を確認した上で、ようやく1988年に自分の名で最初のワインを販売し始めました。1988年のワインというのは、オレゴンの他のワインに比較して色が濃く、複雑で、それでいてフィネスがあるという事で話題になりました。そしてドルーアンが、その理由が密植(つまり他の人々より木々を狭く植えた)にあるとしたために、世界中で密植と品質の関係式を強固にしたとも言われます。しかしその後、実は半分以上は、自社畑以外のブドウを使っていたということが分かって、ある批評家から非難された事もありましたが、結局はワインが全てを解決してくれたということになっています。今は当然、自社畑のブドウを使用するエステートものです。

「アメリカのワインがフランスワインに勝つ」、といいますと何かを思い出しませんか?1976年のパリ・テースティング事件を。そうなんです。実はステーブン・スパリエはこの1975年の話も頭の中に残っていたために、パリ・テースティングを考えついたとも言われているのですよ。

えー、タイトルとはあまり関係のない方向に話が展開してきているので、ちょっと戻りましょう。オレゴンのワインは、カリフォルニアのスタイルとは大きく違います。従いまして、抜くとか、追いつくとかはありません。私の印象では、オレゴンのピノ・ノワールは一般的にはよりブルゴーニュに近いというか、繊細でふくよかという感じ、一般的なカリフォルニアのピノ・ノワールのようにパワフルで、線が太くて、樽がこってりというタイプではありません。やはりブルゴーニュで評価を受けたワインが先駆で、そしてブルゴーニュから来た人物がオレゴンを有名にしましたので、スタイル的にはそうなるのでしょう。

いくつかの品質が高いといわれるワイナリーをご紹介しましょう。ここの内容は、Wine Today (98と99のワインに関すること)とサザビーズのWine Encyclopedea、それにNorthwest Wine Country からのものです。経験があるものは私のコメントをつけました。

Adelsheim
現在のリーダー的存在で、一貫して品質が高く、最も成功しているワイナリー。

Beaux Freres
ここも密植に近い。濃いワイン。私の経験では、いつまで待っても堅い。若い。

Bethel Heights
現在最も品質が高いし、バリューが高い。

Cameron
みずみずしい、かわいらしいワインを造る。もっと評価が高くても良い。樽香が好きな人には、よりアピールする。信頼性高い。

Cristom
カレラ・ワイナリーの最初のワインメーカーだったスティーブ・ドーナーがワインメーカーをしているワイナリー。オレゴンの「味」を変えようという試みをしている。98、99のワインはゴージャス。

Domaine Serene
バランスも良く、ビッグ・スタイルのピノ・ノワールに成功している。メディア受けも良い。品質も安定して信頼できる。私の経験では、素晴らしくフルーティで凝縮感の高いワインです。内容の高さにびっくりした経験があります。

Erath
オレゴンのベストの一つ。ただヴィンテージに差があることがある。98リザーブは良い。近々偉大なワインを造るだろう。

Ken Wright
ブドウ畑のテロワールを忠実に表現させるワインメーカー。98は非常によく、99はさらに良い。

Rex Hill
構成がしっかりしてスタイリッシュなワイン。私の経験では素直においしいワインでした。

Panther Creek
凝縮したワイン。98リザーブは絶世の美女のよう。私の経験では、引き締まった構成のしっかりしたワイン。

Ponzi
オレゴンで最も品質が安定した造り手。98リザーブは完璧に美しい。私の経験では、おとなしい感じ。

他に品質が高いということで、Sokol Blosser、Firesteedなど。注目すべきとしてWestrey、Willakenzieなどがあがっていました。オレゴンのワインは生産量が少ないために割高ですが、見つけたら飲んでみてください。(H)

カレラの一年ぶりのニューズレター

多分「カレラを愛する会」 (www.japanwineclub.com/calera/) の皆さんが訳されるのだろうと思いますが、最近カレラからニュースレターが届きました。ここではちょっとだけそれにコメントしたいと思います。

カレラから新たなワインが発売されています。「メランジュ」ピノ・ノワール($40)という名前で、リードを除く3つの畑の「ブレンド」です。そして「エル・ニーニョ」シャルドネ($12.5)と、「エル・ニーニョ」ピノ・ノワール($12.5)です。

拙訳の「ロマネコンティに挑む」第14章の中で、ジェンセン氏は「ブレンドという言葉は、『品種のブレンド』のことを指すので、(収穫日違いとか、同一畑内の場所違いなどによる)ピノ・ノワールを『一緒にする』場合には、ブレンドという言葉は使わない」と明確に述べているのですが、この「メランジュ」と言う言葉はまさしく「ブレンドのこと」と、自分自身で今回のニュースレターに書いています。1993年以来の「あわせものワイン」なのですが、彼は明確な言葉の使い分けをしているのでしょうか。

いずれにせよ、カレラにしては1993年も1997年も収穫量が大きかった年で(拙訳「ロマネコンティに挑む」のあとがきにあるジェンセン氏自らの寄稿をご覧ください)、単一畑ブランドで売り出すには量が多すぎるので、こちらを制限して「ブレンド」ものを造って、ここに新たな価格帯のワインを登場させてマーケティング的にも様々な顧客層に対してアピールできるようにしたものです。1996年からは、全てのピノ・ノワールの単一畑の値段が上がってしまいましたので(全部のワインで1.5倍以上になった)、いくらアメリカの景気が良いとしても、一部の顧客層が離れていったのは確実なはずですので、この辺りの顧客回復を狙ったものですね。ちなみに「やまや」では1997年の「リード」と「ミルズ」が山積み状態です。これをみれば1997年がいかに収穫が大きかったかが分かります。

さて、ニュースレターは、いつもジェンセン氏が自分で書くわけなのですが、最近の顧客とのやり取りということで、このようなくだりがあります。

皆さん: オンラインセールスはやるのですか?
わたし: いいえ
皆さん: しかし電子メールアドレスはお持ちでしょう?
わたし: いいえ
皆さん: カレラ・ワイナリーのウェブ・サイトはあるのですか?アクセス可能な?
わたし: いいえ

ここで会話は中断してしてしまいます。そして相手は、「ほう、それはなかなか珍しいですね」とか「まあ、あなたは独立独歩なのですね」などと言ってくれますが、心の中ではこう思っているに違いありません。「こいつはばかだ」

そもそも私はEメールを送りもしませんし、受けもしませんが、(人の)Eメールを覗き込んでみて、言語としての英語への冒涜がおきつつある状況を発見してぞっとしました。もう誰も正確には英語を書かないのです。大文字は使わないし、完全な文章も書かないし、自分の考えをまとめないし、考え抜いた説得力のある話をしないし、「送信」ボタンを押す前に読み直すことさえしないのです。全てインターネットが悪いのです。私たちの言葉というのは文化的な財産。本当に崇拝さえしなければならないと思っているのですが、インターネットによって、品質よりスピードを強調するようになって、大文字とか単語と単語の間のスペースさえとってしまうという傾向を生んだのです。その結果、言語の質が全く低下してしまってきているではないですか。残念なことに私が目にしてしまった英語の教師であり、詩人でもあるという人からのEメールにはこういう「単語」がありました。「わらひわからん」(原文は"idontunderstand")

こんなことを書くというのは、友達に向かって本物のごみを送っているようなものだと思いますよ。魚の骨とかジャガイモの皮だとか油のしみたじゅうたんとか、電子的にね。

ということで、「インターネット販売は絶対にやりたくないです。電話、ファックスでいいではないですか…しかし、こんなことを宣言しますと、数名の皆様からは反響があるのはわかっています、そのような意見に対してはオープンに対応しますし、いつかは考え方が変わるかもしれません」として最後を締めくくっています。ジェンセン氏は人類学を専攻していた人物であり、この内容などは、かつての人類学的な見方が少しは入っているのだと思います。

さて、実は息子さんも人類学を専攻している学生です。昨年私たちが彼をワイナリーに訪問したときには、ちょうど息子さんは日本のある大学に短期留学していました。そのときジェンセン氏はコンピュータの前に座って「何だ、あいつメールをよこしていないな」と文句を言っていたのです。従いまして、Eメールも見るし、インターネットも良く知っているのです。彼が言っているのは、「ダーク・ニュー・エコノミー」(*)を代表する立場から自分の考えをちょっと誇張して言っているだけなのですね。

ただ、私たちがワイナリーにいたそのときは金曜日の午後4時に近く、ダイアナを含む女性軍団はもう帰り支度をしていました。そこで印象的だったといいますか、私たちが互いに「?」と顔を見合わせた出来事がありました。ジェンセン氏は「ダイアナ、これ(コンピュータのこと)はどうやってシャットダウンするんだ?」と質問していました・・・

こういう裏話はしてはいけなかったですかね?しかしジェンセン氏は極めて人間味豊かな、ストレートで深みがあるという人ということが、あらためてお分かりいただけたと思います。ただしくれぐれも申し上げておきますが、私がこんなことをこのような公の場で言っていたなどとは、絶対に本人には内緒に!(H)

(*) これもニュース・レターに書いていたことで、ニュー・エコノミーをインターネット社会としたときに、自分はダークな方にいると言っているのです。この「ダーク」という表現は、宇宙に存在する全てのものを100%としたときに、人間には知られていないダーク・マターとダーク・エネルギーが95%を占めているというところからこの言葉を引用してきたのです。深読みが必要ですよ。彼のやることは。

ペンタゴンがガロを支援するという話

ペンタゴンといえば、米国国防省のことです。それがガロのアルコールの調査に対して資金援助を行なうという話です。8月7日付けのSacramento Bee に載っておりました

ガロといえば、古くから大学とか公的機関との共同研究を進めてきておりますので、その相手がペンタゴンといえば不思議ですが、内容としてはありえる話です。国防省は、ガロが行なう「大酒と、脳と、遺伝子との関係の研究」に対して8.5百万ドルの支援を行なう事にしました。昨年の7百万ドルに引き続き支援するものです。

「大酒」というのがポイントで、アルコール中毒とか酒を飲んで暴れるといったところにフォーカスし、遺伝子的な治療に結びつけることが出来ないかという事でこの研究が始まっているようです。ガロの研究所の名は、「ガロ・クリニック&リサーチ・センター」といい、カリフォルニア大学サン・フランシスコ校と提携しています。アルコールと神経の関係についての研究ではアメリカでは随一だそうです。宝酒造みたいなものですね。しかし、ペンタゴンというのが一級の政治家を巻き込んだ論議になっています。

上院議員のマケイン氏といえば、記憶に新しいですが、最後までブッシュ氏と共和党の大統領候補として争った人物ですが、彼はそもそも国防省の2878億ドルの支出に噛み付き、2001年の予算に対しても「上院にいる何年かの内で最もバカげた支援金をふくんでいる。国防省がどういう理由で、そんな大金を目的外の用途に税金を使うのだ」と反駁しています。

マケイン氏はアリゾナ出身だからこそ反対しますし、共和党だから政府は支出を減らせと主張するのはあたりまえのような気もしますが、結果は91―9で大差で支援が決まったところを見ますと、多数派の共和党員の多くもこれに賛成したということになります。カリフォルニア出身のボクサー氏、ファインスタイン氏の両民主党議員がこれを後押ししたのはあたりまえの話で、この両氏に対するガロの見返りも相当なものだということも推測できます。

しかし、それ以上にアルコールが及ぼす社会的な問題に対して急いで研究を進めたいという高い意識の表れかも知れませんね。資金源がどこだろうが、多くの人々はかまわなかったでしょう。逆にもともとが税金ならばなおさらのこと、社会問題という位置付けでこれを解決するのなら、国防省だろうが商務省だろうが農務省だろうがかまわないと思います。お金が通過していくところが違うということだけですからね。(H)

 

二つの合併のはなし

ベリンジャー・グループとKJ(ケンダール・ジャクソン)グループの合併話がいよいよ本格的になってきました。最初はKJがベリンジャーに身売りという話でしたが、合併という話になっています。もともとはKJが上場したかったのだが、生産量とか、ワイン関係の株価の動きの中で、なかなか出来そうにないのでベリンジャーと合併の道を選んだという憶測も流れています。ベリンジャー側からすれば、KJは合弁のいくつかの候補の一つとも言われています。新会社はベリンジャーを母体にした会社になるようですが、もしそうなれば、ワイン関連株に刺激を与えることは間違いありません。Wine Today は早々と取締役会のメンバーの数は12と伝えていたり、合併の範囲などを伝えてはいますが、14日の週が交渉の山場のようで、これからどちらの方向へ流れるかは全く未定、といくつかのソースは伝えています。もし合併が成立しますと、プレミアムワインの世界では世界一の売上規模約6億5千万ドルを誇るワイン・グループとなります。ガロなどはこれよりは大きいですが、プレミアムワインの生産は一部です。

もう一つの話は、Wine.comとWineShopper.comとの合併の話です。Wine.comはワインのインターネット販売ではトップシェアを握っている会社で、一方のWineShopper.comは、今年の春にアマゾン・ドット・コムの後押しで出来たばかりの会社です。両会社ともおよそ1億ドルの資本金で、それぞれに新たなファンドを獲得する事を目指していたようですが、最近になってベンチャーキャピタリストがネット・ビジネスに対して用心するようになってきたため、新たな道として合併を目指しているようです。

こういう話を聞きますと、ワインというのは、本当にただのビジネスです?結局は「金をもうける」ということがないと始まらないのです。金は金のためにどこまでも貪欲になるのですねえ。(H)

だめボトルは返却しますか?

San Francisco Cronicleに、こういうタイトルの記事があったので、ちょっと載せてみようかと思いましたが、記事そのものはあまり面白くなかったので、この内容をご紹介するのはやめます。しかし、アメリカではワインは相変わらずブームですので、ニワカソムリエ氏も増えてきたと思います。

アメリカでは「気に入らなければ、お金を返します」というマネー・バック・プログラムをマーケティングに採用しているデパート、小売、インターネット・ショップがほとんどです。そういう環境で育ってきたニワカソムリエ氏が「悪いワイン=気に入らないワイン」と思うとすると、それはそれは大変な状況になるでしょうね。彼らは自信に満ちていますからね。(H)