Topics&Columns(2003年1月15日)
バカタレワイン!
もともと変な名のワインは少なくはありません。「バタール・モンラッシェ」の「バタール」。これは小学館の「プログレッシブ仏和辞典」を引くと、「私生児」、「雑種」、「異種混合の」などの意味が出てきますが、仏英辞書を引きますと、"bastard"、"hybrid"というのが出てきます。でイタリア語で"bastardo"ということになります。フランス語はともかくも、英語もイタリア語も、声を荒げて"Bastard!""Bastardo!"と人に向かって言うときは、正式ではない→不届きである→許されない・・・が展開し「このバカったれ!」という意味になりますので、用心が必要です。しかし私的には、この言葉を何かのタイトルで使っているとしたら、生産者は非常にユニークな人間だと思いますよね。
で、http://www.wineloverspage.com/wineadvisor/tswa030110.phtml#TOPというサイトに、二つのワインの紹介がありました。"Fat Bastard"と"Il Bastardo"。このサイトには、二つのワインのワインのラベルが紹介されています。(このサイト自身は有名なサイトで「30秒ワイン・アドバイザー」というサイトですが、このサイトの主宰であるロビン・ガーは、多分に私に近いと思っています・・・H)
ロビンは「どういうことだろう?多分ちょっとショックを与えて消費者の気を引こうというマーケティング的な発想なのだろう・・・で、Fat Bastardウェブをのぞいてみると、ワインメーカーのティエリー・ボーディノーとイギリスワイン商のギ・アンダーソンが初めて試飲したときに、ぴったりの英語の表現を探したらこれだったと書いてある。一方で、Il Bastardoの方は、生産者も匿名、輸入者も匿名である。ボトラーは、キャンティ・ルフィーナのレンゾ・マジであるというのはわかる。これらは確かに、マーケティング的な発想なのである。こういう名前でも付けない限りはどうにも価格が不釣合いなのだ」と書いています。
ワインの値段は次の通りのようです。
Tierry and Guy 2001"Fat Bastard"
VdP:10.99ドル
Il Bastardo 2001 Sangiovese Rosso di Toscana:10.99ドル
で、これらの値段に対するロビンのバリュー評定は次の通りです。
Tierry and Guy 2001"Fat Bastard"
VdP:まあ、悪くない。1、2ドル安ければよい。
Il Bastardo 2001 Sangiovese Rosso di Toscana:高い。
ニュアンス的には、「ヤンキーワインだぜ=荒削りで、素性がハッキリしないが、元気がよいワイン」という感じなのだろうなあと思います。しかし面白いですよね。こんな名前のワインを売るというのは。伝統生産国のゆとりといいますか、仮に日本でこういう名のワインをつけたらどうですかね『はねっかえり』。日本酒ならいいかもしれない。(H)
ワインの適正価格
さすが、合理主義の国、オーストラリア。ワインの適正価格を計算するシステムを開発したというニュースがありました。
要約:
Charles Sturt Universityという大学の経済学の助教授であるEddie
Oczkowski氏は8年におよぶ研究の結果、Australian Wine Price
Calculatorというシステムを作ったのです。このシステムはインターネットでも利用できます(http://csusap.csu.edu.au/-eoczkows/winestart.htm 訳注:アクセスしてみましたが、それらしきページやこの助教授のホームページはみつかりませんでした)。
1996年までのデータしかありませんが、品質、評判、ヴィンテージ、品種、地域などを入力するとそのワインの期待値がアウトプットされてくる、という仕組みです。
要約おわり
システムとしては比較的単純ですね。しかしどのくらいの銘柄や小売価格のデータをもとにしているのでしょうか。それによってはすばらしいかもしれませんね。ヨーロッパやアメリカのワインについても作る予定のようです。(N)
偽アイス・ワインからブランドを守る
こちらの話はもうちょっとまともです。近頃、日本でもカナダのアイス・ワインがよく見られるようになりました。実際、カナダからみてアジア市場は一番のお得意さんのようです。
要約:
アジア市場で偽アイス・ワインが出回っていることにカナダのワイナリーは懸念を表明しています。オタワにあるヴィントナーズ・アソシエーションのジャネット・ドロジンスキーは、外務省や国際貿易機関に働きかけてアイス・ワインの名前を守る活動をしています。
「現在、カナダ国外ではアイスワインというブランドを守る規定や条約はありません。このブランドが本当のアイスワインだけを指すことを明確にし、法的な手段をとれるような規定を何らかのかたちにしたいと思っています。」
偽のアイスワインの多くはニュージーランドやオーストラリアで作られていて、遅摘したブドウを冷凍庫を使って冷凍したのち、果汁を絞るというものです。そのボトルやラベル、パッケージなど本当のアイスワインにとてもよく似ている、とドロジンスキー氏は言います。
中国ではカナダのアイスワインと偽アイスワインが一緒に並べられて売られています。アイスワインと偽アイスワインの違いについてはっきりとした基準をもっているのは、ドイツ、オーストリア、カナダ、そしてアメリカだけだ、とも言っています。しかしアジアが一番の消費者なのです。
アメリカのリッチモンドにあるブロッサム・ワイナリーのロビン・ヤング氏は、「すでに多くの人の心に、アイスワインは単に甘いワインというイメージを植えつけたが、カナダではそれ以上の特別な存在だ。」とコメントしています。
要約終わり
ダックホーン・ワイナリーのブランドとは?
カリフォルニアのダックホーン・ワイナリーと言えば、メルローにいち早く目をつけ、アメリカ市場にメルロー旋風を巻き起こしたワイナリーですが、ラベルにはダックの絵がついています。このダックをめぐって、熾烈な法廷争いをやっています。ダックホーンは56000ケースの生産量で、価格帯は20ドルから90ドル、ダックウォークは7ドルから20ドル程度で、全くステータスが異なるワインですが・・・。NYタイムズ1月1日、デカンター1月9日版が伝えていました。
要約:
ニューヨーク郊外のウォーターミルというところにヘロドトス・ダミアノスがワイナリーを買ったのは1994年で、これにダック・ウォークという名前をつけた。もともとこの地方では地料理としてダック料理が有名で、それをしのんでのこと。9年後このダック・ウォーク・ヴィンヤードでは25000ケースのワインを生産し、100エーカーの畑にはメルロー、シャルドネが植えられている。ほとんどのワインはニューヨークで売られ、ラベルにはよちよち歩く白いペキン・ダックが描かれている。
しかし、カリフォルニアのワイナリーであるダックホーン・ワイン・カンパニーはダックの名前とラベルでワインを売る権利は自分達だけがもっていると思っている。
「現在のワインビジネスでは、ダックという言葉とそれをモチーフにしたデザインは、消費者にダックホーン・ヴィンヤードを連想させるのです。ダックホーンは、ダック・ウォークのマークとデザインによって消費者の間にダックホーンと間違うような混乱をきたすことを懸念しています。両者でこのような混乱が起きないようにすることが大切だと思います」とダニエル・ダックホーン氏の弁護士は2000年8月にダック・ウォークに手紙をよこした。
かくしてスタンプやバスタブといったおもちゃによく使われているこの動物をめぐって、西海岸と東海岸をはさんでのブランド使用権闘争の始まりとなった。
2001年、ダック・ウォークは、先手を打って米国地方法廷に告訴を行い、ダック・ウォーク側がその名前とダックが歩いている絵をラベルに使う権利があることを認めるよう申請した。ナパのダックホーン側はこれに対し、ダック・ウォークはトレード・マーク法に意図的に違反しているとして訴えた。
両者があまりに感情的になってきたので、法廷はレポーターにコメントすることを禁じたが、その命令がでる前にダック・ウォークのダミアノス氏はワイン・スペクテーターに次のように語った。「消費者が混乱するなんてことはありえないね。うちのダックはかわいいけど、あっちのは醜いんだから・・・」
実はダックホーンがダックのブランドをめぐって文句をつけたのはこれが初めてのケースではない。
1999年にチェケッティ・セバスティアーニ・セラーがスモーキング・ダックのブランドを作ったとき、ダックホーン氏は、セバスティアーニ氏を説得して、スモーキング・ルーン(ルーンは鳥の一種)に改名させることに成功した。また池に2羽のダック、一羽がシガーを吸い、一羽はもっと抽象的なデザインになっていたラベルも改めさせた。他にも、オレゴン州にあるダック・ポンド・セラーがダックホーンとの間で示談が成立した。
いまや住宅街と化してしまったロング・アイランドでも、かつてはダックがよちよち歩いているようなのどかな農場がたくさんあった。1870年代に中国からペキン・ダックが輸入され、1950年代にはダック農場のピークだったが、70年代に入って土地の高騰とともにこれらは消えていった。しかし今でも、数は少ないがダック農場は存在するし、サザンプトンにはダック料理を出すジョン・ダック・ジュニア・レストランがある。ここではダックは歴史的なシンボルなのだ。ロング・アイランドの観光協会の会長であるマイケル・ホランダー氏は、「こういった連中は、どういう理由でロング・アイランドの伝統であるダックを完全に排除できると考えているとしたらちょっと問題です」とコメントしている。
要約終わり:
どれぐらいラベルが違うかというのは、ウェブを見ていただいたほうが早いでしょう。ダックホーンについては改めてご紹介の必要もないのかもしれませんがこちら、http://www.duckhorn.com/duckhorn_vineyards/curr_vin/index.html、そしてダック・ウォークについてはこちらです。http://www.duckwalk.com/Our_Wines/White_Varietals/Chardonnay/chardonnay.html、またはhttp://www.duckwalk.com/Our_Wines/Proprietors_Blend/Windmill_White/windmill_white.html。えらく違いますがね。
ブランドを巡る争いというのは、他にもいろいろあります。例えば、ケンダルージャクソンはかつて葉っぱのモチーフをめぐってガロを訴えたこと。スタッグス・リープ・ワイン・セラーズが隣のワイナリーであるスタッグス・リープ・ワイナリーを相手取って訴訟を起こしたことなど・・・。しかし今回の場合、あまりにもイメージの違うダックであり、ダックホーン側はちょっと神経質すぎ、傲慢だという印象を受けますが、いかがでしょうか。
名前を守る!
期せずして名前の話ばかりですが、これは8月8日のデカンターが伝えていたものですが、どうも香港のゴールド・ホープ・ワイナリーという会社が、Gold Valpolichellaとか、Yu-lin Valpolicellaといった名のワインを売り始めた模様です。純粋に中国産のワインです。ただ輸出先は、まだイタリア国内だけのようです。
これも同じ記事にあったものですが、オーストラリアのプリモ・エステートというワイナリーが、Moda Amaroneという名をつけたワインをイタリアに輸出し始めたようです。ラベルには、「2000年ジェセフ・モーダ・アマロネは、北イタリアで用いられるユニークな『アマロネ製法』を用いて生産されました・・・」と書かれています。カベルネとメルローのブレンドだそうです。
ヴァルポリチェッラ協会のエミリオ・ファソレッティ氏は、「後者のケースは、EU法で決められたものなので、はるかに事態が深刻」と述べているようです。
いずれイタリア政府が中国政府、オーストラリア政府に申し入れを行うということになるのでしょうね。しかしオーストラリアのワインをさらにアマロネ製法で造る必要があるのでしょうかね?!買って飲んでみましょう。(H)